結論:あなたが今この状態なら、まず「親の判断能力がある今」に動いてください

親の物忘れが気になり始めたら、まず動くべきは今です。認知症への備えの多くは、本人の判断能力がしっかりしているうちにしかできないからです。診断がついてからでは選べなくなる選択肢があります。だからこそ「まだ元気だから大丈夫」と先延ばしにせず、できることから着手してください。

この記事では、認知症が進むと何が難しくなるのか、判断能力があるうちにできる備えは何かを、チェックリストで整理します。なお、後見や信託などの制度は個別事情で向き不向きが分かれるため、この記事は要点にとどめ、判断は専門家への相談を前提にしています。

認知症で何ができなくなりうるか

認知症が進み、判断能力が低下したと見なされると、次のような手続きが難しくなることがあります。

  • 本人名義の口座 — 金融機関が本人の判断能力に問題があると把握した場合、入出金や解約が制限されることがあります(いわゆる口座凍結)。家族でも自由に引き出せなくなる場合があります
  • 実家など不動産の売却 — 売買契約には本人の意思確認が必要なため、判断能力が低下すると家族の一存では売れません
  • 各種契約 — 介護施設の契約や保険の手続きなども、本人の意思確認が難しくなります

これらは「家族なら何とかなる」と思われがちですが、実際には手続きが止まり、介護費用の工面に困るケースがあります。

判断能力があるうちが分かれ目

認知症の備えで最も大切なのは、タイミングです。

  • 任意後見や家族信託などは、本人に判断能力があるうちにしか契約できません
  • 診断後は、選べる制度が法定後見などに限られてくることがあります
  • 財産の在りかも、本人が話せるうちに聞いておく必要があります

「まだ大丈夫」と思っているうちが、実は最も選択肢が多い時期です。詳しい制度の違いは成年後見・任意後見・家族信託の違いで解説しています。

ケース:親に物忘れが増えてきたときの着手の目安と順番

前提として、これは「80代の親に同じ話を繰り返すなど物忘れが増えたが、日常生活は自分でできている」段階の一例です。着手の目安や順番は家庭ごとに異なり、診断の有無でも変わります。

  1. まず財産・契約の在りかを一覧化する — 何があるか分からないと備えようがありません。ここは今すぐ着手できます
  2. 金融機関の代理人サービスなど、簡単な備えを確認する — 後述の代理人指定など、契約が軽いものから
  3. 家族で「誰が中心に動くか」を話し合う — 兄弟姉妹がいるなら情報格差を作らない
  4. 任意後見・家族信託が必要かを専門家に相談する — これらは判断能力があるうちでないと契約できないため、迷うなら早めに

大切なのは順番よりも「判断能力があるうちに動き出す」ことです。診断がついてからでは、選べる制度が法定後見中心に狭まることがあります。

財産の把握・一覧化(まず最初に)

制度を考える前に、そもそも「何があるか」を把握していないと備えようがありません。

  • □ 銀行口座(銀行名・保管場所)
  • □ ネット銀行・証券口座
  • □ 保険(生命・医療・火災)
  • □ 年金の種類と振込先
  • □ 不動産(名義・権利証・固定資産税通知書の場所)
  • □ 借入・ローン・保証
  • □ クレジットカード・電子マネー

この棚卸しは財産・契約を一覧化で進められます。家財の把握には家財棚卸し機能も役立ちます。まずここから着手するのが現実的です。

まず使える「簡易な備え」(契約が軽いもの)

後見や信託は手続きが重く費用もかかります。その前に、金融機関が用意している比較的軽い仕組みも確認しておくと、日常のお金の管理で困りにくくなります。取り扱いは金融機関ごとに異なるため、窓口で確認してください。

  • 代理人指定・代理人カード — 本人が指定した家族が、本人に代わって窓口やATMで一定の取引をできる仕組み。銀行によって名称や条件が異なります
  • 予約型の代理人サービス — 本人が元気なうちに登録しておき、判断能力が低下したときに家族が代理できるようにするサービスを設ける金融機関もあります
  • 公共料金などの口座振替の整理 — 引き落とし先を把握・集約しておくと、後の管理が楽になります

これらは万能ではなく、不動産の売却や大きな契約まではカバーできないことが多い点に注意してください。より広く備えるなら、任意後見や家族信託の検討に進みます。

任せる人・方法の準備

財産を把握したら、「判断が難しくなったとき、誰にどう任せるか」を考えます。主な選択肢は次のとおりです。

  • 任意後見 — 元気なうちに、任せたい人と契約しておく
  • 家族信託 — 財産の管理を家族に託す柔軟な仕組み
  • 法定後見 — 判断能力が低下したあと、家庭裁判所を通じて利用する

ただし、これらは費用・自由度・監督の仕組みが異なり、向き不向きは家庭ごとに大きく変わります。たとえば法定後見は原則として途中でやめられないなどの注意点もあります。どれが適するかは一般論では決められないため、成年後見・任意後見・家族信託の違いで要点を確認したうえで、司法書士や弁護士など専門家に相談してください。

費用の概算レンジ(目安)

金額は依頼先・財産の内容・地域で大きく変わるため、すべて『目安』です。必ず依頼先に見積もりを取ってください。

  • 法定後見の申立費用 — 収入印紙・登記手数料・郵便切手などで概ね1万円前後。加えて、本人の判断能力を確認する医師の鑑定が必要な場合は、鑑定費用が数万〜十数万円かかることがあります(『目安』)
  • 専門職後見人の報酬 — 司法書士や弁護士が後見人になった場合、報酬は家庭裁判所が決定します。月額数万円程度が一つの『目安』ですが、財産額などで変わります
  • 任意後見 — 公証役場での公正証書作成費用がかかり、効力発生後は任意後見監督人への報酬が生じることがあります(『目安』は依頼先へ)
  • 家族信託 — 信託契約を公正証書で作るのが一般的で、不動産があれば信託登記の費用も必要です。設計を専門家に依頼する報酬もかかります(内容により幅が大きい)

初期費用だけでなく、継続的にかかる費用も含めて比較することが大切です。

口座が凍結された場合の実務対応フロー

判断能力の低下が金融機関に把握され、口座が制限(凍結)されると、家族でも自由に入出金できなくなることがあります。その場合の一般的な流れは次のとおりです(対応は金融機関ごとに異なります)。

  1. 金融機関に相談する — まず状況を確認。少額の医療費・介護費など、一部で応じてもらえる取り扱いがある場合もあります
  2. 成年後見制度の利用を検討する — 継続的にお金を動かす必要があるなら、家庭裁判所への後見等の申立てが必要になることがあります
  3. 申立ての準備 — 必要書類や手順は個別に異なるため、法テラスや司法書士・弁護士に相談する
  4. 後見人の選任後に管理する — 選ばれた後見人が、家庭裁判所の監督のもとで財産を管理します

なお、成年後見人がついても、本人が住む居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要です。家族の一存では進められない点に注意してください。

家族での情報共有

一人だけが情報を持っていると、その人が動けなくなったとき家族全体が困ります。

  • 財産や契約の一覧を家族で共有する
  • 「誰が中心に動くか」をあらかじめ話しておく
  • 決めたことは記録に残す

実家じまいAIの家族共有機能を使うと、離れて暮らす兄弟とも同じ情報を見ながら備えを進められます。

急いでやってはいけないこと

「早めに動く」ことは大切ですが、やり方を誤ると本人や家族を守れなくなります。

  • 判断能力が低下した後に、本人名義の契約を進める — 判断能力が下がってから任意後見や家族信託を契約しようとしても、有効に結べないことがあります。焦って形だけ整えると、後で無効を争われるおそれもあります
  • 本人の同意なく口座やお金を動かす — 家族でも無断で引き出すと、後で「使い込み」を疑われ、相続の話し合いがこじれます
  • 本人の意思を確認せずに実家の売却や解約を進める — 判断能力があるうちは本人の意思が最優先。低下後は家裁の許可など正規の手続きが必要です
  • 「認知症の診断がついてから考える」と先延ばしにする — 診断後は選べる制度が狭まります。迷う段階でこそ専門家に相談してください

早めの相談先

一人で抱え込まず、公的な窓口も活用してください。

  • 地域包括支援センター — 介護や生活全般の相談窓口。お住まいの市区町村の公式サイトで「地域包括支援センター」を検索すると場所を確認できます
  • 相続・成年後見の相談 — 法テラス(相続・成年後見のよくある質問)で相談窓口を案内してもらえます
  • 成年後見制度の情報 — お住まいの市区町村や、厚生労働省の情報が参考になります
  • 家族信託・任意後見の具体的な設計 — 公証役場、または司法書士・弁護士へ

備えチェックリスト

  • □ 親の判断能力があるうちに動き始める
  • □ 財産・契約を一覧化する
  • □ 家の名義と権利証の場所を確認する
  • □ 任せる人・方法を家族で話し合う
  • □ 制度の要点を調べ、専門家に相談する
  • □ 家族で情報を共有し、記録に残す
  • □ 地域包括支援センターに一度相談する

よくある質問

Q. 親の口座は認知症になると必ず凍結されますか?

必ずではありません。金融機関が本人の判断能力に問題があると把握した場合に制限されることがあります。対応は金融機関ごとに異なるため、心配なら早めに備えを検討し、詳しくは専門家に相談してください。

Q. 家族なら親の家を代わりに売れますか?

判断能力が低下している場合、家族でも一存では売却できません。成年後見制度の利用が必要になることがあり、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が要る場合があります。個別事情で異なるため専門家に確認を。

Q. 何から準備すればいいですか?

まず財産と契約の一覧化です。何があるか分からないと備えようがありません。財産・契約を一覧化から始め、そのうえで任せる方法を検討するとスムーズです。

Q. 制度の相談はどこにすればいいですか?

まずは地域包括支援センターや市区町村の窓口へ。法的手続きは法テラス(相続・成年後見)、家族信託や任意後見の設計は公証役場や司法書士・弁護士に相談してください。制度は個別事情で最適解が変わります。

次の一歩

親の状況や財産の内容によって、優先すべき備えは変わります。無料診断に答えると、あなたの家庭に合わせて「今やるべきこと」の目安が見えます。家族で話し合うきっかけにもお使いください。

まずは財産・契約を一覧化で在りかを整理し、制度を選ぶ段階になったら成年後見・任意後見・家族信託の違いへ進んでください。

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