結論:最初の30日は「片付け」ではなく「確認」に使う

親が施設に入ると、空になった実家を前に「早く片付けなければ」と焦ります。けれど、この時期に急いで捨てて後悔した、という声はとても多いです。理由は3つあります。

  • 本人がまだ「戻る」と思っている、あるいは気持ちの整理がついていない
  • 重要書類や現金・貴金属が、家のどこにあるか誰も把握していない
  • 兄弟姉妹の間で「誰が・何を・いつまでに」が決まっていない

まずは30日を使って、次の4つを確認してください。片付けはそのあとで十分間に合います。

最初の30日:4つの確認

1. 重要書類の場所を押さえる

探すのは、権利証(登記識別情報通知)、通帳・キャッシュカード、保険証券、年金手帳や年金振込通知、実印と印鑑登録カード、固定資産税の納税通知書、契約書類(電気・ガス・水道・電話・新聞・NHK・サブスク)です。仏壇の引き出し、タンスの奥、桐箱、本棚の本の間、冷蔵庫の中など「意外な場所」もよく使われます。

見つけたものは一覧にして、家族全員が見られる場所(共有メモやこのサービスの実家プロジェクト)に置きます。原本はひとまず1か所にまとめ、持ち出した人と日付を記録しておくと後のトラブルを防げます。

2. 本人の意思と判断能力を確認する

家をどうするかは、所有者である親本人の意思が最優先です。本人と話せるうちに「家は売ってもいいか」「残してほしいものは何か」を聞いて記録しておきましょう。

すでに認知症などで判断が難しい場合、本人名義の家は家族の一存で売却できません。成年後見制度の利用が必要になることがあり、後見人がついても居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が要ります。この段階で「売る前提」で片付けを進めると手戻りになるので、先に地域包括支援センターや司法書士に相談し、進め方を確認してください。

地域包括支援センターは、高齢者の介護・福祉・権利擁護の総合相談窓口で、市区町村ごとに担当エリアが決まっています。探し方は、「(親が住む市区町村名) 地域包括支援センター」で検索し、市区町村の公式サイトから担当エリアのセンターを確認するのが確実です。市区町村の高齢福祉課・介護保険課に電話で聞いても案内してもらえます。親が住んでいる地域のセンターが窓口になります。認知症が心配な段階での準備は親が認知症になる前のチェックリストもあわせて確認してください。

3. 毎月出ていくお金を止める・見直す

空き家でも、固定資産税、火災保険、電気・水道の基本料金、新聞、通信費などは出ていきます。解約できるものは解約し、水道と電気は「片付け・売却まで使うか」で判断します(作業中は電気と水が必要です)。

火災保険は、空き家になると契約条件が変わることがあります。保険会社に「空き家になった」と伝え、継続できるか、必要な手続きは何かを確認してください。

年間維持費の試算例(目安)

誰も住まなくなった実家でも、次のような費用が毎年かかります。金額は物件・地域で大きく変わるため、あくまで内訳のイメージです。

  • 固定資産税・都市計画税 … 年10万〜20万円程度(評価額による。納税通知書で確認)
  • 火災保険 … 年数千円〜数万円(空き家扱いで上がることがある)
  • 電気・水道・ガスの基本料金 … 月あわせて数千円 → 年数万円
  • 庭木の手入れ・空き家管理サービス … 依頼するなら月数千円〜 → 年数万円
  • 遠方の場合の交通費 … 往復のたびに数千〜数万円

これらを足すと、年間で数十万円になる家も珍しくありません。「使っていないのに毎年これだけ出ていく」という金額を家族で共有すると、維持・貸す・売るの判断が進みます。

施設費と実家維持費の「同時負担」に注意

施設に入ると、施設の利用料・食費・医療費などが毎月かかります。そこに実家の維持費が上乗せされると、家計は二重の負担になります。親の年金・預貯金で施設費をまかなえるか、実家の維持費をいつまで出し続けられるかを、早い段階で数字にして見ておくことが大切です。維持費の負担が重いと感じたら、貸す・売るといった出口を前倒しで検討する材料になります。

4. 家族の役割と連絡ルールを決める

「長男が全部やる」と暗黙のうちに決まると、あとで不満が出ます。書類担当・家財担当・不動産担当・お金の記録担当のように分け、決めたことは文字に残します。遠方の家族が参加しやすいよう、家財の判断はオンラインで集める形が向いています。

3か月まで:家の「出口」を4つから選ぶ

書類と家族の体制ができたら、家そのものをどうするかを比べます。選択肢は基本的に4つです。

  1. 維持する(空き家として管理) — 本人が戻る可能性がある、売るか決められない場合。月1回程度の換気・通水・郵便物の確認が必要で、遠方なら空き家管理サービス(月数千円〜)を使う人もいます。放置すると、自治体から「管理不全空家」「特定空家」と判断され、固定資産税の住宅用地特例が外れる可能性があります。
  2. 貸す — 立地が良く、建物が使える状態なら。ただし荷物を出し、修繕し、管理会社を決める必要があり、家財の整理は結局必要です。
  3. 売る — もっとも多い選択です。「荷物そのまま」で買い取る業者もいますが、家財の処分費が価格から引かれます。売却益には譲渡所得税がかかる一方、一定の条件を満たすと控除が使える場合があります(相続後の売却など。条件は税理士か税務署で確認を)。
  4. 解体して土地で売る — 建物が古く、買い手がつかない場合。解体費がかかり、建物を壊すと固定資産税が上がることがあるため、売却のめどをつけてから壊すのが基本です。

この4つは、親が存命かどうか、家の名義、立地、建物の状態で優劣が変わります。迷ったら「1年は維持し、その間に家財を整理し、売却査定を取る」という中間案が現実的です。

1年まで:家財の整理と、必要な業者への依頼

出口が決まれば、家財の整理は目的がはっきりします。「全部処分」ではなく、家財を1点ずつ「家族が引き取る/売る/譲る/寄付/供養/処分」に振り分けると、処分費が減り、思い出も残せます。

業者に頼む工程は、片付け(遺品整理・生前整理)、買取、仏壇供養、庭木・庭石、解体、不動産売却、相続登記(司法書士)です。すべてを1社に頼む必要はなく、工程ごとに見積を取り比べるのが安全です。特に不用品回収は、家庭ごみを扱うには市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が必要で、無許可業者による不法投棄や高額請求のトラブルが各地で報告されています。許可番号を確認できる業者を選んでください。

よくある失敗と、その避け方

  • 本人に無断で処分した — 施設で「あれはどこ?」と聞かれてから気づくケース。写真を撮って「思い出として残す」だけでも、本人と家族の納得感が違います。
  • 一人で抱え込んだ — 進捗と費用を共有していないと、あとから「勝手に決めた」と言われます。記録を残しながら進めましょう。
  • 売る前に壊した — 解体費だけかかり、土地が売れないこともあります。査定が先です。

急いでやってはいけないこと

  • 本人の同意・意思確認の前に家財処分や売却を進める — 家は所有者である親のものです。本人が「戻る」と思っている段階で勝手に片付け・売却を進めると、信頼関係を損ない、後から「勝手に決めた」ともめます。話せるうちに意思を聞いて記録し、進め方の合意を取ってください。
  • 認知症で判断が難しいのに、家族の一存で売却を進める — 本人名義の家は家族だけでは売れません。成年後見制度の利用が必要になることがあり、後見人がついても居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が要ります。この点を知らずに売却前提で動くと、大きな手戻りになります。まず地域包括支援センターや司法書士に相談してください。
  • 無許可の不用品回収業者にまとめて頼む — 家庭ごみの回収には市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が必要です。無許可業者による不法投棄や高額請求が各地で報告されています。許可番号を確認できる業者を選んでください。
  • 維持費の見通しを立てずに「とりあえず維持」を続ける — 施設費と実家維持費の二重負担が、気づかぬうちに家計を圧迫します。年間維持費を数字にし、いつまで維持するかの期限を決めてください。

よくある質問

Q. 親が認知症です。実家を売れますか?

本人名義の家は家族の一存では売れません。成年後見制度の利用が必要になることがあり、後見人がついても居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が要ります。まず地域包括支援センターや司法書士に相談し、進め方を確認してください。

Q. 実家の維持費は年間どのくらいかかりますか?

固定資産税、火災保険、電気・水道の基本料金、庭木の手入れや空き家管理、遠方なら交通費などを合わせて、年間で数十万円になる家も珍しくありません(物件・地域による目安)。納税通知書などで実額を確認し、家族で共有すると判断が進みます。

Q. 施設に入っている間、家はどうしておくのが無難ですか?

本人が戻る可能性や気持ちの整理がつかないうちは、「1年は維持し、その間に家財を整理して売却査定を取る」という中間案が現実的です。維持する場合も、月1回程度の換気・通水・郵便確認が必要で、遠方なら空き家管理サービスを使う人もいます。

Q. 相続税や譲渡所得の特例は使えますか?

売却益(譲渡所得)には所得税・住民税がかかり、相続後の売却などでは一定の要件を満たすと控除が使える場合があります。条件が細かく、親が存命か否かでも扱いが変わるため、税務署・税理士で確認してください(国税庁 No.3306)。

確認先・参考(一次情報)

税・制度は個別事情で変わります。断定せず、必ず公的窓口や専門家で確認してください。

  • 成年後見・相続などの無料相談 … 法テラス
  • 相続空き家の3,000万円特別控除の要件 … 国税庁 No.3306
  • 介護・福祉・権利擁護の総合相談 … お住まい(親が住む地域)の市区町村の地域包括支援センター
  • 空き家相談窓口・固定資産税 … お住まいの市区町村の公式サイト

次の一歩

実家の状況(親の状態、名義、立地、建物、家財の量、家族構成)によって、やる順番は変わります。まずは3分の無料診断に答えると、あなたの実家に合わせたロードマップと参考費用が表示されます。登録なしで結果まで見られますので、家族と共有する叩き台に使ってください。物件の情報は不動産カルテに記録し、手残り試算で維持・貸す・売る・解体を数字で比べられます。出口の比べ方は実家を売る・貸す・残す・解体の決め方もご覧ください。