まず、「申請しないともらえない」と知っておく

親が亡くなった後にお金の不安がある状態なら、まず「もらえるお金の多くは、自分で申請しないと受け取れない」ことを知っておいてください。役所や年金の窓口が自動で振り込んでくれるわけではなく、こちらから手続きをして初めて受け取れるものがほとんどです。

制度を知らずに申請しないままでいると、本来受け取れたお金を取りこぼしてしまいます。しかも多くの制度には申請期限があります。この記事では、死亡後に受け取れる代表的なお金と、どこに申請すればよいかの考え方を整理します。金額や期限は制度改正で変わることがあるため、実際の手続きの際は該当する公的機関の最新情報をご確認ください。

申請しないともらえないという原則

もらえるお金には、大きく分けて次のようなものがあります。

  • 健康保険から支給される葬祭費・埋葬料
  • 年金に関するもの(未支給年金・遺族年金など)
  • 医療費に関するもの(高額療養費の払い戻しなど)
  • 生命保険・団体信用生命保険(団信)
  • 税金の還付など

いずれも、要件を満たしていても申請しなければ受け取れないのが基本です。まずは「自分の家族が対象になりそうなものはどれか」を洗い出すところから始めましょう。

ケース:国保加入の父が入院後に死亡した場合

前提: 国民健康保険に加入していた父が、しばらく入院したのちに死亡。母と子2人が家族。葬儀は子が手配した。

このケースで対象になりうるお金を並べると、次のようなイメージです(要件を満たす場合。実際に受け取れるかは個別に確認が必要です)。

  • 葬祭費(国保)— 葬儀を行った子などへ。おおむね1〜7万円の目安。時効2年
  • 高額療養費の払い戻し — 入院で自己負担が上限を超えていれば対象になることがある。時効2年
  • 未支給年金 — 父が年金受給中なら、生計を同じくしていた遺族へ。時効5年
  • 遺族年金 — 母などが要件を満たせば受け取れることがある(金額は要件次第の目安)
  • 準確定申告による還付 — 医療費控除などで所得税が戻る場合がある

このように、一つの死亡でも複数の制度が絡みます。対象になりそうなものを最初に書き出しておくと、取りこぼしを防げます。

健康保険からの葬祭費・埋葬料

亡くなった方が加入していた健康保険から、葬儀や埋葬を行った人に対して、葬祭費または埋葬料が支給される場合があります。

  • 国民健康保険・後期高齢者医療の場合は「葬祭費」と呼ばれることが多く、支給額はおおむね1〜7万円(自治体によって異なる目安)
  • 会社員などの健康保険(協会けんぽなど)の場合は「埋葬料(埋葬費)」と呼ばれ、協会けんぽでは5万円
  • 申請期限: いずれも時効は2年です。葬儀・埋葬を行った日の翌日などから2年を過ぎると受け取れなくなる場合があります
  • 最小限の必要書類: 申請書+葬儀を行ったことがわかる書類(会葬礼状・葬儀費用の領収書など)+申請者の振込口座。健康保険証の返却を求められることもあります

申請先は、国民健康保険・後期高齢者医療ならお住まいの市区町村の窓口、会社員などの健康保険なら加入していた保険者(協会けんぽや健康保険組合など)です。協会けんぽの埋葬料の解説は協会けんぽ( https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/burial_charges/index.html )で確認できます。

未支給年金・遺族年金

年金を受けていた方が亡くなると、まだ受け取っていない年金(未支給年金)が発生することがあり、一定の遺族が請求できる場合があります。また、要件を満たすと遺族年金を受け取れることがあります。

  • 未支給年金は、生計を同じくしていた遺族(配偶者・子・父母などの順)が請求できる場合があります。時効は5年です
  • 遺族年金には遺族基礎年金・遺族厚生年金などがあり、要件や金額は状況によって異なります(金額は要件次第の目安。受け取れるかは関係や生計の状況で変わります)
  • あわせて年金の受給停止(受給権者死亡届)の手続きも必要です
  • 最小限の必要書類: 未支給年金は、未支給年金請求書+亡くなった方の年金証書+請求者と亡くなった方の関係がわかる戸籍+生計同一を確認できる書類+請求者の振込口座

年金に関する手続きは日本年金機構・年金事務所が窓口です。未支給年金の解説は日本年金機構( https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/kyotsu/20140731-02.html )、遺族年金の受給要件は日本年金機構( https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/index.html )で確認できます。要件や必要書類、期限は個別の事情で異なるため、年金事務所や日本年金機構の公式サイトでご確認ください。年金の停止手続きの時期については死亡後の手続きチェックリストも参考になります。

高額療養費の払い戻し

亡くなる前の入院や治療で医療費が高額になっていた場合、自己負担の上限を超えた分が高額療養費として払い戻されることがあります。すでに支払った医療費が対象になることもあります。

  • 対象になるかは、加入していた健康保険と自己負担額によって異なります
  • 払い戻しは申請が必要で、相続人が受け取る形になる場合があります
  • 申請期限: 時効は2年です(診療を受けた月の翌月初日などから2年)
  • 最小限の必要書類: 高額療養費支給申請書+医療費の領収書+相続人であることがわかる戸籍+振込口座

詳しくは、加入していた健康保険の窓口や、お住まいの市区町村の窓口、高額療養費制度の解説(厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html )でご確認ください。

生命保険・団体信用生命保険(団信)

亡くなった方が生命保険に加入していた場合、受取人が死亡保険金を請求できます。保険証券や保険会社からの通知を確認し、保険会社に連絡してください。

  • 生命保険金の請求には、死亡診断書のコピーなどが必要になることが多い
  • 住宅ローンを組んでいた場合、団体信用生命保険(団信)によってローン残高が完済されることがあります

団信が使えると住宅ローンの負担がなくなる場合があるため、住宅ローンがあった方は金融機関に確認してください。家をどうするかを考える際は実家を売る・貸す・残す・解体するの比べ方もあわせてご覧ください。

その他(税金の還付など)

このほか、状況によっては次のようなお金が戻ることがあります。

  • 準確定申告による所得税の還付(払い過ぎていた場合など)
  • 介護保険料・後期高齢者医療保険料の過納分の還付
  • 各種会員制度・共済などからの給付

準確定申告については死亡後の手続きチェックリストでも触れています。税の取り扱いは条件によって異なるため、国税庁( https://www.nta.go.jp/ )や税務署、税理士にご確認ください。

申請の期限に注意(日数の目安)

もらえるお金の多くには申請期限(時効)があります。主なものを日数の感覚で整理すると、次のとおりです(制度改正で変わることがあります)。

  • 葬祭費・埋葬料 — 時効2年
  • 高額療養費 — 時効2年
  • 未支給年金 — 時効5年

「後でやろう」と思っているうちに期限が過ぎてしまうと受け取れなくなる場合があるため、対象になりそうなものを早めにリストにしておくのが安心です。

誰が申請・受領するか(もめやすい点)

制度によって「申請できる人」が違います。葬祭費・埋葬料は原則として葬儀を行った人(喪主など)、未支給年金や遺族年金は生計を同じくしていた遺族、高額療養費や税の還付は相続人が受け取る形になることがあります。受け取ったお金が誰のものか(葬儀費用の実費なのか、相続財産に含めるのか)で家族の認識がずれると、後の話し合いでもめる原因になります。誰が何を申請し、いくら受け取ったかを記録に残し、家族で共有しておきましょう。

受け取れるお金と申請先を整理するには、やることを管理に、対象・申請先・期限をまとめておくと抜け漏れを防げます。何が自分の家族に当てはまるか分からない方は、無料診断で状況に合わせた手続きの一覧を確認できます。手続き全体の期限は死亡後の手続きタイムラインでも確認できます。

急いでやってはいけないこと

  • 申請書類になる領収書・明細を捨てる — 葬儀費用の領収書や医療費の明細は、葬祭費・高額療養費・医療費控除の申請に必要です。片付けの前に取り分けてください。
  • 受け取ったお金の扱いを決めずに使ってしまう — 相続財産に含まれるお金を一人で使うと、後で精算がもめます。使い道を記録に残しましょう。
  • 相続放棄を考えているのに給付金を受け取って使う — 制度によっては相続財産とみなされ、相続放棄に影響する可能性があります。受け取る前に専門家(司法書士・弁護士、法テラス https://www.houterasu.or.jp/site/faq/souzoku-seinenkouken.html )へ確認すると安心です。

よくある質問

Q. 何もしなくても振り込まれるお金はありますか?

基本的には、こちらから申請しないと受け取れないものがほとんどです。制度によって扱いは異なりますが、「自動で入ってくる」と考えず、対象になりそうなものは自分で確認して申請することをおすすめします。

Q. 葬祭費と埋葬料は両方もらえますか?

加入していた健康保険の種類によって、どちらの制度になるかが分かれるのが一般的です。両方を重ねて受け取れるとは限りません。詳しくは加入していた保険者やお住まいの市区町村の公式サイトでご確認ください。

Q. 遺族年金は誰でももらえますか?

いいえ。遺族年金には要件があり、亡くなった方との関係や生計の状況などによって受け取れるかが変わります。要件は日本年金機構でご確認ください。

Q. 申請の期限を過ぎたらもう受け取れませんか?

期限を過ぎると受け取れなくなるものが多いですが、制度によって扱いが異なります。過ぎている可能性があっても、あきらめずに窓口へ相談してみてください。


死亡後にもらえるお金は種類が多く、知らないと取りこぼしがちです。あなたの家族が対象になりそうなものを整理したいときは、無料で診断するから始めてみてください。