まず、期限のある手続きから押さえる
死亡後の手続きが多すぎて不安な状態なら、まず「期限が決まっているもの」だけを先に確認してください。期限のない片付けや遺品整理は後からで十分間に合います。焦って全部を同時に進めようとすると、かえって大事な期限を見落としがちです。
この記事では、主な手続きを「7日以内」「14日前後」「すみやかに」「3か月」「4か月」「10か月」の期限で並べ、各期限に最小限の必要書類も添えています。行頭に □ を付けたチェック項目で、済んだものから消していけるようにしました。なお、ここに記載する期限や取り扱いは制度改正や個別事情によって変わることがあります。実際の手続きの際は、該当する公的機関やお住まいの市区町村の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
亡くなった当日〜直後の動きは親が亡くなったら最初にやることにまとめています。まだの方はそちらから読むと流れがつかめます。死亡日を入れるだけで各期限の締切日を自動計算できる死亡後の手続きタイムラインも、あわせて使うと日付で管理できて便利です。
ケースで見る「いつ・誰が」
前提: 父が9月1日に死亡・母は存命・子2人。年金受給中、国民健康保険に加入、預貯金と自宅あり、借金は不明。
この場合、9月7日までに死亡届、9月中に年金停止・国保や介護保険の資格喪失、11月末(3か月)までに借金の有無を確認して相続放棄をするか判断、翌年1月初め(4か月)までに準確定申告の要否確認、7月初め(10か月)までに相続税の申告要否を確認、という並びになります。長男が役所・年金、長女が金融機関・書類、と担当を分けると重複や抜けを防げます。締切日はご家庭の死亡日で変わるため、死亡後の手続きタイムラインで自分の日付に置き換えて確認してください。
7日以内にやること
- □ 死亡診断書(死体検案書)を受け取る
- □ 死亡診断書のコピーを複数枚とる
- □ 死亡届を提出する(原則、死亡を知った日から7日以内)
- □ 火葬許可証を受け取る
- □ 通夜・葬儀・火葬を行う
死亡届はお住まいの市区町村の窓口に提出します。葬儀社が代行してくれることも多いため、まず葬儀社に確認するとよいでしょう。7日以内は法令上の期限です。
- 最小限の必要書類: 死亡届(死亡診断書と一体の用紙)+届出人の本人確認書類。提出先=亡くなった方の本籍地・死亡地・届出人の住所地いずれかの市区町村窓口。制度の解説は法務省( https://www.moj.go.jp/ONLINE/FAMILYREGISTER/5-4.html )。
14日前後にやること
この時期は、公的な資格に関する手続きが集中します。期限の目安は手続きによって異なります。
- □ 年金の受給停止の手続き(年金を受けていた場合)
- □ 未支給年金の請求(受け取れる場合があります)
- □ 健康保険・後期高齢者医療の資格喪失の届出、保険証の返却
- □ 介護保険の資格喪失の手続き、被保険者証の返却
- □ 世帯主変更届(世帯主が亡くなり、残る世帯員が2人以上の場合など)
年金の手続きは日本年金機構が窓口です。期限は年金の種類によって異なる場合があるため、早めに確認してください。健康保険・介護保険・世帯主変更は、お住まいの市区町村の公式サイトで必要書類と期限をご確認ください。受け取れるお金の全体像は死亡後にもらえる・戻るお金の一覧にまとめています。
- 最小限の必要書類: 年金受給者の死亡届(受給権者死亡届)=年金証書・死亡を確認できる書類。未支給年金請求=請求者の戸籍・生計同一を確認できる書類・振込口座。健康保険・介護保険=保険証(被保険者証)・届出書。提出先=日本年金機構・年金事務所(年金)/市区町村窓口(健保・介護・世帯主変更)。年金受給者の死亡届の解説は日本年金機構( https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140731-01.html )。
すみやかに進めること(期限は明確でないが早いほうがよい)
- □ 公共料金(電気・ガス・水道)の名義変更または解約
- □ 携帯電話・インターネット・NHK・新聞の解約または名義変更
- □ クレジットカード・サブスクリプションの解約
- □ 銀行口座の扱いの確認
- □ 運転免許証・パスポートなどの返納
止め忘れると料金が続く契約は、通帳の引き落としやメールから洗い出すのが確実です。詳しくは亡くなった後に止める契約・解約リストを参照してください。銀行口座は名義人の死亡を金融機関が知ると凍結されるため、親の銀行口座はいつ凍結される?もあわせてご確認ください。
3か月以内:相続放棄・限定承認
- □ 相続財産(プラスの財産・借金などマイナスの財産)の大まかな把握
- □ 相続放棄または限定承認をするかの検討
- □ 家庭裁判所への申述(する場合)
相続放棄などは、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」(法令上の期限)とされています。借金や連帯保証など、負の財産が多い可能性があるときは特に早めの検討が必要です。
- 最小限の必要書類: 相続放棄申述書+亡くなった方の戸籍(除籍)謄本・住民票除票+申述人の戸籍謄本。提出先=亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所。費用の目安は収入印紙800円(1人分)+連絡用の郵便切手(数百円)+戸籍などの取得実費です。手続きの解説は裁判所( https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html )。
判断に迷う場合は、期限が過ぎる前に家庭裁判所や司法書士・弁護士、法テラス( https://www.houterasu.or.jp/site/faq/souzoku-seinenkouken.html )に相談してください。詳しくは相続放棄とはで解説しています。
4か月以内:準確定申告
- □ 亡くなった方に確定申告が必要だったかの確認
- □ 準確定申告(相続人が代わりに行う所得税の申告)
亡くなった方に一定の所得があった場合など、相続人が代わりに所得税の申告(準確定申告)を行う必要があることがあります。期限は原則として「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」(法令上の期限)とされています。
- 最小限の必要書類: 準確定申告書+亡くなった方の所得がわかる書類(源泉徴収票・医療費の領収書など)+相続人が連署する付表。提出先=亡くなった方の住所地を管轄する税務署。
必要かどうかや手続きは個別の事情で異なるため、国税庁( https://www.nta.go.jp/ )や税務署、税理士にご確認ください。
10か月以内:相続税の申告・納付
- □ 相続財産の評価と、相続税がかかるかの確認
- □ 遺産分割協議(遺産分割協議書とは)
- □ 相続税の申告・納付(必要な場合)
相続税には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があり、相続財産がこの範囲内であれば申告が不要な場合もあります。申告が必要な場合の期限は、原則として「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」(法令上の期限)とされています。相続税がかかるかどうか、控除や特例が使えるかは条件によって異なります。
- 最小限の必要書類: 相続税申告書+亡くなった方と相続人の関係がわかる戸籍一式+遺産分割協議書(または遺言書)+財産の評価がわかる資料(不動産の評価証明・残高証明など)。提出先=亡くなった方の住所地を管轄する税務署。
詳しくは相続税は誰が払う?と国税庁( https://www.nta.go.jp/ )でご確認ください。不動産がある場合は相続登記(原則3年以内・義務化)も必要です。詳しくは相続登記へ。
期限を過ぎるとどうなるか
期限のある手続きは、遅れると金銭的な不利益が生じるものがあります。
- 相続放棄(3か月)を逃す — 原則として単純承認したものとみなされ、借金や連帯保証などのマイナスの財産も相続することになりかねません。失権すると取り消しは容易ではありません。
- 相続税(10か月)に遅れる — 本来の税額に加えて無申告加算税や延滞税がかかる場合があります。小規模宅地等の特例など、期限内申告が要件の優遇が使えなくなることもあります。
- 準確定申告(4か月)に遅れる — 加算税・延滞税の対象になることがあります。逆に還付があるケースでは、申告しないと戻るお金を受け取れません。
いずれも「気づいたときには過ぎていた」が起きやすいので、日付での管理をおすすめします。死亡後の手続きタイムラインなら、死亡日から各期限の締切日を自動で出せます。
急いでやってはいけないこと
- 相続放棄を考えているのに遺産を使う・処分する — 預貯金を引き出して使う、家財を売るなどをすると、相続を承認したとみなされて放棄できなくなる場合があります。負債の有無が不明なうちは財産に手をつけないのが安全です。
- 中身を確認する前に書類・郵便物を捨てる — 請求書や契約書は「もらえるお金」や負債の把握に必要です。
- 相続税の全体像が見えないうちに遺産分割を急いで確定する — 特例の適用や分け方で税額が変わることがあり、いったん決めた協議はやり直しが難しくなります。
誰が何を担当するかを最初に決める(もめやすい点)
チェック項目は家族で分担するのがおすすめですが、担当を分けずに進めると二重申請や抜けが起きます。たとえば同じ手続きを2人が別々に窓口へ行ってしまう、逆に「相手がやったはず」で誰も出していない、といったことです。誰がどの手続きを担当し、どこまで進んだかを見える形にしておくと防げます。やることを管理に期限つきで登録すると、家族で進捗を共有しながら一つずつ消していけます。
専門家に相談すべき境界
- 相続放棄・限定承認、負債があるか不安 — 司法書士・弁護士、法テラス( https://www.houterasu.or.jp/site/faq/souzoku-seinenkouken.html )。
- 相続登記(不動産の名義変更) — 司法書士。
- 相続税の申告・準確定申告 — 税理士・税務署。
- 相続人どうしで話し合いがまとまらない — 弁護士・法テラス。
何が自分の家族に必要かをまず知りたい方は、無料診断で状況に合わせたチェックリストを作れます。
よくある質問
Q. 全部の手続きを自分でやらないといけませんか?
いいえ。多くは家族で分担できますし、相続登記や相続税など専門的なものは司法書士や税理士に依頼できます。無理に一人で抱え込まず、期限の近いものから優先すると進めやすくなります。
Q. 期限を過ぎてしまった手続きはどうなりますか?
手続きによって取り扱いが異なります。相続放棄など期限が重要なものは、過ぎる前の相談が大切です。すでに過ぎた可能性があるときも、あきらめず早めに専門家や窓口へ相談してください。
Q. 死亡届の後、まとめて手続きできる窓口はありますか?
市区町村によっては、死亡に関する手続きをまとめて案内する窓口を設けている場合があります。取り扱いは自治体で異なるため、お住まいの市区町村の公式サイトで確認するとよいでしょう。
Q. 相続税は必ずかかりますか?
必ずかかるわけではありません。基礎控除の範囲内なら申告不要となる場合もあります。かかるかどうかは財産の額や構成によって異なるため、国税庁や税務署、税理士にご確認ください。
期限のある手続きは、並べて見えるようにするだけで負担がぐっと軽くなります。あなたの家族に必要な手続きと期限を一覧にしたいときは、無料で診断するから始めてみてください。