まず「借入先の金融機関に団信の有無を確認する」ことから

あなたが今、住宅ローンの残る実家を相続してどうすればよいか分からない状態なら、まず「借入先の金融機関に連絡して、団体信用生命保険(団信)が付いているかを確認する」ことから始めてください。団信が付いていれば、名義人の死亡でローンが弁済され、残債が消えることが多いからです。ここが分からないうちは、返済も売却も相続放棄も判断できません。

住宅ローンが残る実家は、「借金ごと相続してしまうのでは」と不安になりやすい財産です。ただ、実際には団信の有無で結論が大きく変わります。慌てて結論を出す前に、事実の確認から順に進めましょう。なお、以下は一般的な整理であり、実際の取り扱いは事情により異なります。必ず借入先の金融機関で確認してください。

まず団信の有無を借入先に確認する

住宅ローンの多くには、団体信用生命保険(団信)が付いています。団信付きのローンは、名義人が亡くなったときに保険金でローンが弁済され、残債が消えることが多い仕組みです。

  • まず借入先の金融機関に「名義人が亡くなった」と連絡し、団信の有無と手続きを確認します
  • 団信の請求には、死亡診断書や戸籍などの書類が必要になることが一般的です(必要書類は金融機関により異なります)
  • フラット35など、団信への加入が任意だった時期・商品もあります。加入していなければ残債は残ります

団信が付いているかどうかは、返済予定表や契約書類だけでは分かりにくいことがあります。自己判断せず、借入先の金融機関へ確認してください。

団信ありでローンが消えたら、抵当権抹消登記

団信でローンが弁済されて残債が消えても、法務局の登記に残った抵当権は自動では消えません。完済後に、抵当権を消す「抵当権抹消登記」を自分で申請する必要があります。

  • 金融機関から抵当権抹消に必要な書類(弁済証書、委任状など)を受け取ります
  • その書類をもとに、法務局へ抵当権抹消登記を申請します
  • あわせて、名義を相続人に移す相続登記も必要です。相続登記は2024年4月から義務化され、原則として取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になり得ます

登記の手続きに不安があれば、司法書士に依頼できます。相続登記の詳しい進め方は実家の相続登記のやり方も参考にしてください。制度の概要は相続登記の申請義務化(法務省)で確認できます。

団信なし・連帯債務で残債が残る場合の選択

団信が付いていない、または連帯債務・連帯保証で他の人にも返済義務が残る場合、残債は相続財産の一部として引き継がれます。このときの選択肢は、おおむね次の3つです。

  1. そのまま返済を続ける — 実家に住み続ける、あるいは貸し出して家賃で返す場合。金融機関に相続人への名義変更(債務引受)の手続きを相談します
  2. 売却して残債を返す — 売却代金でローンを完済し、残りを受け取る方法。売る流れは実家を売る全体の流れを参考にしてください
  3. 相続放棄する — 残債などの負債がプラスの財産を上回るなど、引き継ぐと損になる場合の選択肢

どれを選ぶかは、残債の額、実家の資産価値、他の相続財産、家族の希望で変わります。ひとりで抱え込まず、家族と情報を共有して決めてください。

オーバーローン(残債が資産価値を上回る)の注意

売っても残債を返しきれない状態を、オーバーローンといいます。この場合は特に慎重な判断が必要です。

  • 売却してもローンが残り、手元にお金が入らないどころか持ち出しになることがあります
  • 相続財産全体が「マイナス」なら、相続放棄も選択肢になります。相続放棄は自分のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があり、期限を過ぎると難しくなります
  • 相続放棄をすると、実家を含むプラスの財産も一切引き継げません。判断は実家の相続放棄を考えるときの注意点もあわせて確認してください

売却で残債を返しきれるかどうかは、査定額と残債を並べて確認します。無理な場合の選択も含め、金融機関・司法書士・弁護士など専門家に相談することを検討してください。

ケースで見る(一例)

前提や状況によって流れは変わります。ご自身の状況に置き換えてお読みください。

父が亡くなり、実家の住宅ローンが1,000万円ほど残っていた。相続してよいのか、借金ごと引き継ぐことになるのか分からず不安だった。
  • 最初の数日:借入先の金融機関に連絡したところ、団信が付いていることが分かった。死亡診断書などの書類を用意して団信を請求した。
  • 1〜3か月:保険金でローンが弁済され、残債が消えた。次に、名義を相続人に移す相続登記と、抵当権を消す抵当権抹消登記を司法書士に依頼した。
  • その後:残債がなくなったため、実家を売るか住み続けるかを家族でゆっくり検討できた。相続放棄の3か月の期限も、団信で残債が消える見込みが立ってから落ち着いて判断できた。

この家では「まず金融機関に団信を確認した」ことで、不要な不安と急いだ判断を避けられました。団信の有無が分からないうちに相続放棄を焦って決めていたら、消える借金のために資産まで手放していたかもしれません。

費用の目安と決まり方

住宅ローン残る実家の相続でかかる主な費用は、次のように決まります(金額は目安で、事情により異なります)。

  • 相続登記の登録免許税 — 固定資産税評価額 × 0.4%。評価額1,000万円なら4万円が目安です
  • 抵当権抹消登記の登録免許税 — 不動産1個につき1,000円(土地・建物で計2,000円が目安)
  • 司法書士への報酬 — 相続登記・抵当権抹消を依頼する場合、数万円〜が目安(事務所により異なります)

団信の請求そのものに保険料の追加負担はありませんが、死亡診断書の発行料などの実費はかかります。正確な金額は、金融機関・法務局・司法書士に確認してください。

急いでやってはいけないこと

  • 団信を確認する前に相続放棄を決める — 団信付きなら残債が消えることが多く、放棄すれば資産まで失います。まず金融機関に団信の有無を確認してから判断してください。
  • 相続放棄の期限(原則3か月)を意識せず放置する — 負債が多く放棄すべき場合でも、期限を過ぎると難しくなります。判断が難しければ早めに専門家へ。
  • 残債があるまま名義や返済を放置する — 返済が滞ると遅延損害金や競売のリスクがあります。相続後の返済・名義変更は金融機関に相談してください。

よくある質問

Q. 団信が付いているか、どうすれば分かりますか?

契約書類や返済予定表だけでは判断しにくいことがあります。まず借入先の金融機関に「名義人が亡くなった」と連絡し、団信の有無と請求手続きを確認してください。加入が任意だった商品や時期もあるため、自己判断せず必ず金融機関に確認しましょう。

Q. 団信でローンが消えれば、もう何もしなくてよいですか?

いいえ。残債が消えても、登記に残った抵当権は自動では消えません。完済後に抵当権抹消登記が必要です。あわせて、名義を相続人に移す相続登記(2024年4月から義務化)も必要です。手続きに不安があれば司法書士に依頼できます。

Q. 団信がなく、残債が残る場合はどうすればよいですか?

返済を続ける、売却して返す、相続放棄する、の3つが基本の選択肢です。残債の額と実家の価値、他の財産を並べて判断します。相続放棄は原則3か月以内という期限があるため、判断が難しい場合は早めに司法書士や弁護士など専門家に相談してください。

Q. 売っても残債が残りそうです(オーバーローン)。どうすれば?

売却代金でローンを返しきれない場合、持ち出しになることがあります。相続財産全体がマイナスなら相続放棄も選択肢です。金融機関に返済方法を相談しつつ、相続放棄の期限も意識して、専門家に相談しながら判断してください。


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