結論を先に言うと、実家売却は「名義の確認(相続後は相続登記)→査定→媒介契約→売り出し→売買契約→引き渡し」の順で進み、全体で数か月かかります。 最大のつまずきどころは名義で、親が亡くなっている場合は相続登記を済ませないと契約手前で止まります。まず登記事項証明書などで名義が誰かを確認する——これが今日の一歩です。
売ると決めたら、まず名義(相続登記)を確認する
あなたが実家を売ると決めたなら、まず「名義が誰になっているか」を確認してください。親が亡くなっている場合、家が親名義のままでは売却できません。売却の前に、相続人へ名義を変える相続登記が必要になります。
相続登記は2024年4月から義務化され、不動産を取得したことを知った日から原則3年以内の申請が必要で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます(法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00590.html)。売却の話を進めても名義が被相続人のままだと契約手前で必ず止まるため、売ると決めたら真っ先に着手してください。手順は相続登記の進め方で詳しく解説しています。あわせて、そもそも売るべきか迷う場合は売る・貸す・残す・解体の比べ方もご覧ください。
実家売却の全体の流れ
売却は、おおむね次の順で進みます。全体で数か月かかるのが一般的です。
- 名義の確認 — 相続後なら相続登記を済ませる
- 査定を依頼 — 複数の不動産会社に価格の査定を取る
- 媒介契約を結ぶ — 売却を依頼する不動産会社を決める
- 売り出し — 価格を決めて売り出し、購入希望者を募る
- 売買契約 — 買主が決まり、条件を詰めて契約・手付金の受領
- 決済・引き渡し — 残代金の受領と同時に鍵と名義を引き渡す
このうち自分の判断が要るのは、査定額の見極め、会社選び、売り出し価格の決定、契約条件です。順を追って見ていきます。
相続登記が先に必要
繰り返しになりますが、相続後の売却では相続登記が前提です。遺産分割協議で誰が相続するかを決め、必要書類を揃えて法務局に申請します。相続人が複数いる場合は、売却の方針と代金の分け方も先に話し合っておくと、後のトラブルを防げます。
登記や書類の準備は手間がかかるため、司法書士に依頼することもできます。詳しい手順は相続登記の進め方を、口座や各種手続きは死亡後の手続きチェックリストや口座凍結を参考にしてください。
売却に必要な主な書類
売却の過程で求められる主な書類は次のとおりです。相続後はこれに相続登記関連の書類が加わります。物件や不動産会社により増減するため、早めに手元を確認しておくと段取りが楽になります。
- □ 登記識別情報(または権利証) — 所有者であることを示す書類
- □ 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)と実印・印鑑証明書
- □ 固定資産評価証明書・固定資産税の納税通知書
- □ 土地の測量図・境界確認書(境界が確定しているか。ないと引き渡し前に測量が必要になることがある)
- □ 建築確認済証・検査済証(建物が法令に沿って建てられたことを示す書類)
- □ 建物の図面・設備の説明書、マンションなら管理規約や修繕関連の書類
- □ (相続後)被相続人・相続人の戸籍、遺産分割協議書、相続登記後の登記事項証明書
権利証や検査済証が見当たらないケースは実家では珍しくありません。ない場合の代替手段もあるので、早めに不動産会社や司法書士に相談してください。
仲介と買取の違い・向き不向き
売り方には大きく「仲介」と「買取」の2つがあります。
- 仲介 — 不動産会社に買主を探してもらう。市場価格に近い金額で売れやすい一方、売れるまで時間がかかることがある
- 買取 — 不動産会社が直接買い取る。早く確実に現金化できる一方、価格は仲介より下がる傾向
- 仲介が向く:時間に余裕があり、できるだけ高く売りたい
- 買取が向く:早く手放したい、期限がある、人に見られず売りたい
どちらが良いかは事情によります。両方に相談し、価格と期間を比べて決めるのがおすすめです。
不動産会社の選び方
売却の成否は会社選びで大きく変わります。次を押さえてください。
- 複数社に査定を取る — 1社だけだと相場が分からない。2〜3社を目安に
- 査定額の根拠を聞く — 高い査定額が売れる価格とは限らない。周辺事例など根拠を確認
- 地域の実績があるか — その地域での売却実績、得意な物件種別
- 担当者の対応 — 説明の分かりやすさ、連絡の早さ、こちらの希望を聞く姿勢
- 囲い込みに注意 — 自社の買主だけに絞って他社に情報を回さない行為。他社経由の問い合わせも受けるか確認
査定額の高さだけで選ばず、根拠と対応を合わせて判断してください。
媒介契約の種類の要点
媒介契約には主に3種類あり、依頼できる会社数や報告頻度が異なります。
- 一般媒介 — 複数社に同時に依頼できる。自分で買主を見つけることも可能
- 専任媒介 — 1社に依頼。会社は定期的に販売状況を報告する義務がある
- 専属専任媒介 — 1社に依頼し、自分で買主を見つけることもできない代わり、報告頻度が高い
複数社に競わせたいなら一般、1社にじっくり任せたいなら専任系、と考えると選びやすくなります。
契約段階で注意したいこと
買主が決まってからの契約段階には、あとで「知らなかった」となりがちな注意点があります。要点だけ押さえておいてください。
- 手付解除 — 契約時に買主から手付金を受け取るのが一般的です。相手が履行に着手する前であれば、買主は手付金を放棄して、売主は手付金の倍額を返して契約を解除できるのが原則とされています。安易に契約・解除をすると金銭的な負担が生じ得ます。
- 契約不適合責任 — 引き渡した物件に契約内容と異なる欠陥(雨漏り、シロアリ、設備の不具合など)があった場合、売主が修補や減額などの責任を負うことがあります。実家は築古で不具合が隠れていることも多いため、分かっている不具合は事前に告知し、責任の範囲を契約書で明確にしておくことが大切です。
- 残置物(家財)の扱い — 家財を残したまま引き渡すのか、いつまでに撤去するのかを契約で明確にしてください。
契約書の文言は専門的です。疑問点は署名前に不動産会社や専門家に確認し、その場の勢いで押印しないことが、後のトラブル回避につながります。
ケースで考える:相続後の売却の流れ
一つのケースで、動き出しから引き渡しまでの流れを見てみます。以下は考え方を示す例で、期間や結果は事情により異なります。
前提 — 半年前に父が死亡。実家は父名義のまま、相続人は子2人。誰も住まないため売却で合意している。
このケースを時系列で追うと、まず相続人2人で遺産分割協議をして相続登記を申請(書類収集と合わせて1〜2か月程度が実務目安)。登記が済んだら2〜3社に査定を依頼し、根拠と担当者の対応を比べて媒介契約を結びます。売り出してから買主が決まるまでは市況や価格しだいで数週間〜数か月。売買契約で手付金を受け取り、決済・引き渡しで残代金の受領と同時に名義を移します。売却代金は、あらかじめ決めた分け方に沿って2人で分配します。取得費が不明なら概算5%の扱いになるため、購入時の資料探しと相続空き家控除の可否を、売却と並行して税理士に確認しておくと安心です。
売却益と税の注意点
家を売って利益(譲渡所得)が出ると、税がかかることがあります。ここは断定できない領域なので、要点だけ押さえてください。
- 譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)で計算するのが基本
- 取得費 — 買ったときの価格や費用。実家は取得時の資料が残っていないことが多く、取得費が不明な場合は売却価格の5%を概算取得費として使えるとされています(=目安)。この場合、売却価格のほとんどが利益扱いになり税負担が大きくなりがちなので、購入時の契約書などが残っていないか探してみてください。
- 相続空き家の3,000万円特別控除 — 一定の要件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。建築時期(昭和56年5月31日以前など)・耐震・売却期限(相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、など=要確認)といった細かい要件があります(国税庁 No.3306 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)。
- 所有期間によって税率が変わることがある
手取りの概算イメージ — たとえば1,000万円で売れ、取得費が不明で概算5%(50万円)、譲渡費用が仲介手数料など約40万円だとすると、譲渡所得はおおよそ910万円。ここに相続空き家控除などの特例が使えれば税負担が大きく下がる、という関係です(あくまで考え方の例。実際の税額は事情により異なります)。特例が使えるか、税額がいくらになるかは個々の状況で大きく変わるため、必ず税理士や国税庁の情報でご確認ください。
荷物が残ったままでも売れる
「片付けが終わらないと売り出せない」と思われがちですが、家財を残したまま売り出す方法もあります。詳しくは家財を残したまま家を売るをご覧ください。ただし残置物の扱いは契約で明確にする必要があります。売却と並行して家財整理を進めるなら、家財を写真で棚卸しや家財・遺品整理ガイドが役立ちます。
なお、業者に不用品処分を頼む際は、無許可業者や高額請求に注意してください。業者選びは遺品整理業者の選び方を、トラブル時は国民生活センターへの相談を参考にしてください。
急いでやってはいけないこと
早く売りたくても、次の進め方は損やトラブルにつながりがちです。
- 相続登記の前に売買契約を進めること — 名義が被相続人のままでは契約手前で止まります。買主に迷惑をかけ、信頼も損ないます。まず相続登記を済ませてください。
- 1社の査定だけで決めること — 相場が分からないまま安値で手放したり、根拠のない高値で売れずに値下げを繰り返したりしがちです。2〜3社で根拠を比べてください。
- その場の勢いで契約書に押印すること — 手付解除や契約不適合責任の条項は後で効いてきます。疑問は署名前に確認を。
- 相続空き家控除の期限を意識せず先延ばしにすること — 相続開始から3年を経過する年の12月31日など期限があります。使えるなら手残りが大きく変わるため、早めに税理士へ確認してください。
よくある質問
Q. 実家の売却にはどのくらい期間がかかりますか?
査定から引き渡しまで、仲介では数か月かかるのが一般的です。相続登記が必要な場合はその期間も加わります。買取なら早く現金化できることもありますが、価格は下がる傾向です。物件により幅があります。
Q. 相続登記をしないと売れませんか?
親名義のままでは売却できないため、相続後は名義を相続人へ変える相続登記が必要です。手続きに時間がかかるので、売却を決めたら早めに着手してください。詳しくは相続登記の進め方をご覧ください。
Q. 査定額が高い会社に頼めばいいですか?
査定額の高さと実際に売れる価格は別です。根拠のない高い査定は、後で値下げになることもあります。複数社の査定を取り、根拠と担当者の対応を合わせて選ぶのがおすすめです。
Q. 売却益にはどのくらい税がかかりますか?
譲渡所得の有無や特例の適用で大きく変わり、一律には言えません。取得費や所有期間、相続空き家の特例の要件によっても異なります。税額は税理士や国税庁にご確認ください。
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